私が新しい土地に引っ越しして来た中1の時、あれは、12か13の時の話。
幸いにも1年生の初めから入れて、遠くから転校してきたことは伝えたが、たまたま席の近くの女子と仲良くなることができて、このまま順調に輪に馴染めるんだろうと思っていた。
理科室かなんかに移動教室で行く時、あれ?ということが起きた。
その仲良くなった女子グループの5人くらいが、私に一言も声をかけず、かけても無視し、まるで避けるようにして皆で行ってしまったのだ。
こんなことは初めてで、頭の中が?でいっぱいになった。
私が何かしたのか、だとしたら、何をしただろう?
私はひとりで理科室に行った。
授業が終わり、そのグループはaちゃんのそばに集まっていた。
視線が冷たいのに気付いていたが、私はその輪の場所に行って、こう言った。
「私、何かした?悪いことをしていたのなら謝りたいから言って欲しい」
aちゃんはしくしく泣いているようで、2人くらいそれを慰めて、別の子がこう言った。
「aちゃんが好きな○くんが、(私のこと)ちゃんを好きみたいらしくて」
理由を聞いてびっくりしてしまった。
私はただここに存在していただけなのに。
その男子を好きと言ったわけでもない、aちゃんに何か言ったわけでもない、私がまたまたその男子に好かれている「かも」しれないというだけで、皆で私を避けたのか。
とにかくそれを聞いた時、心底幻滅して、驚いた。
「私は○くんを好きでもないし、付き合うとかそういうことには絶対ならないから、誤解させていたのならごめんね、でも本当にそういう感情はないから安心して欲しい」
そう伝えた。
aちゃんは泣いて下を向いたままだったが、なんとなく私の言う意味がわかったのか、強くかたまっていた輪がほぐれて、教室に向けて歩きだした。
あの後、どうやって普通に友達をしていたか覚えていないが、aちゃんとも仲良くしていたし、グループの女子とも友達だった。内一人は今も連絡をたまにとる友達。
あの時、わかったのは、人はその人自体が何か悪さをしたわけでなくても、嫉妬から簡単に憎悪の対象にし、周りを巻き込んだりすること。
周りも、良く考えもせずに、その人が泣いたりして苦しんでいるのを見て、輪になり一緒になって対象を憎んだりすること。
あの人達はいたって普通の人達だったのを考えると、こわかった。
人の心はなんて簡単に流されるんだろう。その場の感情だけで、皆でひとりを無視したり仲間外れにしたり。
正論なんか無駄なんだろう。考えもしないんだろう。言うことをきかせようとしても無駄なんだろう。
流されたふりをして、自分の心を強く持つこと、それが現実を生きる秘訣なんだろう。
自分の心がしっかりしていれば、問題ないのだ。
全て敵にまわしても、結局わかってはもらえないのだ。
内側に入ってうまく誘導しないと、ただ壁を作るだけになるのだと。
あの時は勉強させてもらったな。
aちゃんは、数年後に会ったら心がなくなったように無表情な人になっていたけど、ああいう弱い心に自分が負けたんだろうと思う。
娘にいつかそういうことがあってほしくはないけど、集団に流されて悪くない人を傷つける人にはなって欲しくない。
例え、事情があってその輪の中にいるとしても、心を強く持って、自分は正しく接して欲しい。
そのことを八方美人とか偽善だとか思って欲しくない。
自分が、自分という人間がどうありたいか、そこを心の中では見失わないで欲しい。