雪が降っている予定だった娘の機嫌がちょっと悪い。
お向かいのお家の屋根に白く薄ら積もっているのを見て、あそこに行きたいと言う。
危ないからやめて欲しい。
昨日だって、母の朝の約束を破って、自分なりに行動した結果、失敗している。
私も怒った。
私は最初から、今日は駄目だよと言っていたことだったからだ。
もともと娘は我慢ができない。
好きになったら、どんなに注意されても、それを止めることができない。それの良い面があるのは認めるが、自制が子供でまだできない上に、更に個としてものすごく主張がある。
止めたいことがある時も、頑として聞かない個性の、とても厄介な子だ。
自分で痛い目に遭わないとわからないタイプだ。遭ってもわからないのかもしれない。
なんで?と文句を言いながら繰り返すタイプに感じる。
私は子供の頃、割とそういうところは自分で言うのもなんだが、要領が良かったから、これをすると後で困るとわかると、すんなり目上の話は聞くタイプだし、困ったことはそれほどないと思う。
娘の課題は我慢だ。
前から友達が好きすぎて、ものすごく積極的に誘うし、相手ともとても仲が良いので、有難く思うのだが、放っておいたら毎日のように同じ子と遊びの約束をしてきてしまう。
相手も特別な習い事など特にしていないから、自由なのもある。
しかし、連日のように誘うと、流石にこれまでの傾向から、相手のお母さんもあまり良い気持ちでないのは薄々感じていた。
家族で買い物したり、たまにはじっくり宿題をみたり、そういう時間がなくなると思うからだ。
限度ってものがある。
私は娘がいなければそれはそれでいいけれど、相手があることとなると、気を揉む。
だから、何回も何回もその遊びに行くということで娘と喧嘩してきた。
一日、間をあけなさい、連続はやめなさい、親御さんに良く思われなくなったら、それまでできていた遊ぶことが、ずっとできなくなることもあるんだよ、と。
たった一日我慢すればいいのに、私の忠告を聞かず、「お願い、友達には無理しないでいいから、来れたらでいいからと言ったから」と、約束して帰ってくる。
子供同士のしてしまった約束ごとに、そんなに親が口出しするのも面倒だし、どうしても駄目な時はすっぽかされていることもあるので、じゃあどうぞご自由に、となる。
すると、外から泣きながら電話がかかってくる。
相手のお母さんが、遊びに行くならもう帰ってくるなと激怒したと。
ほら見たことか、と思う。
私は先に何度も何度もこのようなことを言ってきて、たまたま今朝も、今日は駄目だよ、と言ったのに、と思う。
いちいちそのたびに相手のお母さんに連絡をとるのは、私も嫌だし。余程のことがないと。
だった一日我慢すれば良かったのに、それすらできないからこうなる。
遊んではいけないとはひとつも言っていない。
むしろ、友達との遊びから人との付き合いを学ぶことも多いし、今はそれが大事だと思うから、この成長を歓迎しているのだけど、我慢ができないことで、その後の関係に響いてしまうことはあるのだから、それを何度も言ってきた。
まだ子供だから、相手の親御さんに嫌われたら終わりなのだ。
娘と遊ぶことで、勉強に響いたりしていれば尚更面白くないだろう。
一日お休みを入れる、その我慢ができないことで、これからずっと嫌がられてしまうことだってあるんだ。
だからいつも言う。
どんなにおいしいものでも、満腹なのに、食べろ食べろおいしいだろうと、口に無理やりどんどん詰め込まれ続けたら、吐くんだよ、と。
初めはそのものが大好きだったとしても、大嫌いになるぞ、と。
おいしかった、また食べたい!と思える、お腹に隙間がある物足りないくらいの方が幸せなんだ、その幸せの方が長く続くんだ、と。
なんだってそうだ、もうこれいらない、ウンザリ!苦しい!って思った瞬間、見るのも嫌にならないか。
だいたい大好き過ぎると、そのあたりがわからなくなって失敗する。
人により、時により、その満腹の感覚は違うのだから、それを感じないといけない。自分と同じ腹の大きさではないということ。
過剰って、いいことばかりではない。どんなに好きでも反動で大嫌いになることがあるのだ。
そうすると、大事にしなくなるし、されなくなるのだ。
自分ひとりのことならまだしも、相手の家族を巻き込むのだから、ちょっとは考えろと何度も何度も言ってきた。
あー、楽しかった!また遊びたいな!って、すんなり思えて、次を待ち焦がれるくらいがちょうどいいのだ。
物憶えが良かったり、習い事をしていない割には色々学校で選ばれたり、良い点をとれる時があったり、好きなことに夢中になれる意欲はすごい!と、手放しで褒められるが、このやめておこうと諭す時も意地でも我を通すしつこさ、親の忠告をきかない部分は、本当に評価できない。
バランスが悪すぎると思う。
言ってもきかないのだから、自分で痛い目に遭って学ぶしかないのだ。
理由がわかるまでにどれだけ大変な思いを繰り返すのだろう。
それが見えていても、これが彼女という人なのだろう。頭に来るが、このわかりきった失敗を見守るしかないのだろう。
頑張ってくれとしか思えない。
それでも私は保護者だから、人の何倍かかっても、ほどほどの大切さ、有り難さを教えていかないといけない。
楽しいばっかりの子育てなんかないよな、あるとしたら、その人は超恵まれているか、ものすごくポジティブに振り切れた人だと思う。羨ましい。
本当に困った。何かを止めるのに、人の100倍くらいは力が要っているのではないかと思う。
正直、毎度毎度、疲れてしまう。精神だけでぐったりだ。
またか、最初から私はそう言っていたのに、と思って怒ってしまう。
母の言うことはたまには素直に聞きなさい!
聞いているだけでは有り難みはわからないかもしれないから、たまには失敗しなさい!実感しなさい!
自分でそこから何か学ぶのが大切です!繰り返さないことを意識してください!
真面目に話す母を裏切ることばかりで、我欲に負け過ぎるからです!
芯が強いことと、我を通すことは違うものです!
我を通すことがいい時と悪い時とがあります!それを感じられるようになりなさい!
ハアハア。
こういうハアハアは要らないんだよ、とほほ。
まだ子供には難しいのはわかっているんだけどね、とにかく悪い頑固なんだよ。それで良く失敗して、私が巻き込まれるんだよ。
謝らないといけないんだよ。ついこの間も別件で結構大きめの謝罪をしたばかりだよ。もう、疲れたよ。
私が親だから駄目なのかなって、本当に落ち込むんだよ。違う人が育てたらどうだったのかなと思うのだよ。性格に関わる部分、全部夫に任せたらどうだったろうかと思うよ。いないからあり得ない想像だけど。
母としての自信なんてなくなるんだよ。もうボロボロになるんだよ。自分の心がボロボロになっていくのを感じるんだよ。
娘だってこんな自分だから駄目なんだと、私の落ち込みを見て思うよな。
母だってそんなに強くないよ。
思いがけない失敗とは違う、避けられる失敗を先に教えているのに、まんまと失敗されるのじゃ、がっくり度が違うんだよ。防げたトラブルだと思うからだよ。わかるか、娘よ。
さて、次はいつこういうことがあるだろう。先が思いやられる。
そりゃあ、あんたはかわいいよ。ハリセンとんでくるけど、ハアハアスリスリしちゃうくらいかわいいよ。かけがえのない大切な私の子だよ。
だけど、かわいいかわいいばかりでなく、鬼にならねばならぬ時がある。
親って大変、と、たまには盛大に愚痴りたくなる。