娘が風邪をひいて、鼻水を出したので、耳鼻科に連れていった。
耳鼻科の待合室の中での話。
その日はまあまあ混んでいて、ざっと見た感じ、子どもや老人、色々な人がいた。
娘と席で待っていると、背中の向こうから、話が聞こえてきた。待合室は狭く、話は筒抜けだ。
おばあさんらしき声で、どうやら親子に話しかけているみたい。
「この子はひとりっ子かい、?」
「そうです」
「だからかな、なんかちょっと、、遅い感じがするね、競争心とかある?」
「いいえ、ひとりっ子だから、ゆっくりですし、取り合いになっても取られっぱなしです」
「きょうだいがいるといつも取ったり取られたりだから、ゆっくりはしていられないんだよなあ、ひとりっ子だからゆっくりなんだねぇ」
、、、こんな会話だったように記憶。
またこのおばあさんは、穏やかな口調ながら、ひとりっ子どうこうとか、とんでもないこと言ってるな、超余計なお世話だし、うちの娘はひとりっ子だけど、競争心あって逆に困っていた時だってあるし、ひとりっ子だから、二人兄弟だから、どうこうとか、本当にやめてやってよ、しかも、多分「発育が」だと思うけど、遅いとか、もっと余計なお世話だし!!何気なくの言葉で悪気はないのかもしれないけど、失礼だよ!!と、背中合わせなので、顔が見えない二人の会話をモヤモヤしながら、聞いていた。
私も知らないおばあさんやおじいさんに励まされたこともあれば、余計なことを言われたこともあるけど、これはかなりモヤモヤする会話だった。
お母さんも、そんな失礼な会話ながら、さらっと笑顔で流しているような感じで、頑張っているなと、心で応援していた。
会話が聞こえてきたからって、後ろを振り返ったりしたら失礼だし、お母さんもかわいそうだし、聞いて聞かぬふりをしていた。
そうしたら、そのお母さんの子どもが、トイレに行きたいとなったらしく、席を立って、トイレに向かった。
私達の横を通りすぎた。
娘より大きい男の子だ。小学校低学年くらいかな、野球帽を被っていた。
その横顔を見て、私は驚いてしまった。
想像すらしていなかった。一瞬、目を疑った。
その男の子はダウン症のお子さんだったんだ。
トイレの中もお母さんが付き添いをしていた。
このお母さんはどんな気持ちでさっきの会話をしていたのだろう。明るく、さらっと流して、、、なんだか胸が苦しくなった。
トイレから二人が席に戻り、先に診察が終わり、私達の横を通りすぎながら帰る時、その背中を見ながら、私は願わずにはいられなかった。
障がいがあったからどうこうとか、上から目線なのかとかそういう感情は当事者じゃないとわからないし、そもそも色んな感情の人がいるし、もしかしたら不快な感情かもしれない、お前に何がわかる?状態は承知の上、そんな風に思われようがどうなろうが、知ったこっちゃない、だけど思わず心で願わずにはいられなかった。
このお母さんと男の子の願い事が10個くらい一気に叶えられますように!お願い、叶えられますように!
耳鼻科での診察を終えて、娘と二人、手を繋ぎながら外に出た。
空はとても青くて綺麗だった。
幸せってなんだろう、って、そんなことを思った。